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日別アーカイブ: 2025年9月22日

第22回造作工事雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社小倉工務店、更新担当の中西です。

 

~やりがい~

 

細部で性能をつくり、日常の体験を上げる仕事

内装の最前線にある造作工事は、巾木・見切り・建具枠・カウンター・手摺・収納・造作家具など、空間の機能と品位を決める最後の工程です。いま現場から求められる“ニーズ”は高度化し、同時にこの仕事ならではの“やりがい”も深くなっています。本稿は、何が求められているかどこに達成感があるか、を実践視点でまとめます。


1|いま求められる「10のニーズ」

  1. 要求性能の連続性
     防火(不燃・準不燃/防火設備)、遮音ラインの途切れゼロ、気密・断熱、耐震固定。意匠だけでなく“機能の通し方”が評価軸。

  2. 納まりの再現性
     BIM/CADで干渉を事前解決、標準ディテールで誰が施工しても同品質に。CNC・プレカット前提の寸法管理。

  3. 清掃性・耐久性
     ホテル・医療・商業では角の欠け・汚れ・水染み対策が必須。面材・エッジ・見切り金物の選択が秤にかけられる。

  4. 安全・バリアフリー
     手摺高さ、開口制限、段差解消、滑り抵抗。法規+運用まで見据えた寸法拘束が求められる。

  5. 短工期・段取りの巧さ
     タクト工程、ルーム引渡し、夜間作業。外段取り化・先行検査で“待ち”を作らない。

  6. 多職種インターフェース
     電気・空調・設備・AVや防災機器と納まりを共通図で合意。点検口・配線逃げ・補強下地の見える化。

  7. 材料の選定根拠
     F☆☆☆☆、抗菌・耐汚染、耐薬品、LCA(環境負荷)。「なぜこの面材か」を数値で語る。

  8. 改修への適応力
     既存精度・下地の歪み吸収、騒音粉じん抑制、居ながら工事。解体→復旧→清掃の一気通貫。

  9. 記録と保証(“言える化”)
     建付け・目地・平面度・トルク・写真の台帳。引渡し時に性能+メンテ情報を揃える。

  10. サステナビリティ
     分解容易な固定、部材交換の設計、再生材・FSC。長寿命=環境価値という視点。


2|やりがいを生む“7つの瞬間”

  1. 線が通ったとき
     巾木から枠、カウンターの見付けまで影が一直線に揃う。空間がキリッと締まる快感。

  2. 機能が図面どおりに“生きる”
     遮音ラインが途切れず、扉の気密が効き、手摺が身体に馴染む。目に見えない性能を形にできる誇り。

  3. 難所を“納め切る”
     曲面、段差、異素材取り合い。現場合わせではなく準備と工夫で一発で決める達成感。

  4. 使い手の反応が近い
     「掃除が楽」「子どもが安全」「受付が映える」。生活・業務が楽になる実感が直で返ってくる。

  5. 段取り勝ち
     先行下地→先行造作→先行検査がハマり、手戻りゼロで工程が前倒しになる。チームで勝つ手応え。

  6. デザインとコストの両立
     見えがかりは突板、触れる面はメラミン。**“要点の配分”**で美しさと耐久を両立できたとき。

  7. 技の継承
     留めの角度、圧着の癖、ビスピッチの理由を言語化・SOP化して後輩に渡せる喜び。


3|発注者別「ニーズの翻訳」早見表

  • 設計者:意匠×性能の両立、BIMでの干渉解消、標準ディテールの提示、色差・艶の管理。

  • 現場監督:タクト順守、搬入・仮置き動線、検査基準の合意、多職種の段取り。

  • 施主・運用者:清掃性・傷への強さ、メンテ方法、部材交換の容易さ、保証条件。


4|そのまま使える「サービス・パッケージ」

  • 標準ディテール集(A3×10)
    建具枠・巾木・見切り・手摺・カウンター・点検口…防火/遮音/清掃性の要点を図解で。

  • BIM納まりレビュー
    干渉チェック→拾い出し→CNCデータ連携。版ズレ撲滅と歩留まり改善。

  • 品質“言える化”パック
    建付け・平面度・目地幅・締結トルク・写真をQR台帳で引渡し。メンテ手順付き。

  • 改修・居ながら工事パック
    防音・粉じん・臭気計画、日次エリア引渡し運用。既存の歪み吸収ディテールを併用。


5|現場で効くチェックリスト

設計段階

  • 防火・遮音・気密の連続性図はあるか

  • 見切り・目地・クリアランスの数値基準が合意済みか

  • 設備・電気の逃げ寸法/点検口の位置は確定か

製作段階

  • CNCデータ=最新図を確認(リビジョン明記)

  • 面材の**ロット差(ΔE)**と艶の整合

  • 端材・予備部材・補修材の手配

施工段階

  • レーザー基準出し→対角・直角の実測

  • 仮固定→水平・建付け→本固定の順序厳守

  • 端部の封止・耐水エッジと養生

引渡し

  • 検査表(建付・面差・目地)+写真台帳

  • メンテマニュアル・交換手順書の配布


6|ショートケース

A|オフィスの可動間仕切り×遮音

  • 課題:レイアウト変更性とWeb会議の遮音。

  • 解:天井・床の遮音層連続+建具の気密材+下レール段差吸収

  • 結果:Rw向上、手戻りゼロで引渡し前倒し。

B|ホテルの清掃性×木質感

  • 課題:日次清掃で角欠け・汚れが発生。

  • 解:触れる面は高耐汚染メラミン、視覚面は突板。小口は耐水エッジに。

  • 結果:クレーム減、更新周期が延伸。

C|居ながら改修の騒音粉じん

  • 課題:テナント営業を止めない。

  • 解:先行モジュール製作+夜間差し替え、集塵・仮囲い・動線分離。

  • 結果:売上影響最小、工程ズレなし。


7|KPI(成果を“数字”で語る)

  • 一次合格率(建付け・平面度・目地)

  • タクト遵守率/手戻り件数

  • 清掃・補修工数の低減率

  • ロス・端材率/歩留まり

  • 事故・ヒヤリハット件数

  • 交換容易性(所要時間・工具)


8|90日アクション(明日から動ける三手)

  1. 造作標準ディテールの社内化
     A3×10種を整え、設計・監督・工場・現場で同じ図を使う。

  2. BIM→CNCの直結フロー
     造作家具・建具を3D化→拾い出し→CNCへ。版ズレと加工待ちを削減。

  3. 検査の“言える化”
     建付け・目地・平面度の測定手順と許容値を統一。写真台帳をルーム単位で保存。


結び

造作工事は“最後の仕上げ”ではありません。防火・遮音・清掃性・安全・環境までを、意匠と両立させる外皮の内側エンジニアリングです。
ニーズは厳しく、要件は多い――だからこそ、線が通り、扉が吸い付くように閉まり、手摺が安心を与える瞬間に大きなやりがいがあります。

 

 

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